日本人の平均寿命は現在、男性が81歳、女性が87歳で「人生百年時代」と言う言葉が現実味を帯びてきました。定年後の時間を「余生」とは言えない時代がやって来たのです。でも人生百年時代は楽しいことばかりではありません。とても長い老後が最後に待っているのです。世に言う引退年齢が65歳とするならば、100歳迄生きるとすると35年の老後があることになります。

若い頃、私は人生の浮き沈みを富士山を描くようなイメージを抱いていました。それは現役時代のある時にピークを迎え後はなだらかに下降線を辿るような。小市民的かも知れないが、晴耕雨読を良しとし孫の成長を見守りながら穏やかに過ごす老後。それはかってなら美しい老い方だったかも知れません。でも人生百年時代ではひと山越えた後の人生がとても長いし定年後に現役時代と同じくらいの長さの人生がもう一度巡ってくるのです。

現役の頃のこと、滞米生活が長くなるにつれアメリカ的な発想にも感化されたこともあり、還暦までには会社人生を終え、後は自分の好きなことをやりノンビリと余生を過ごそうと思いました。その目標は叶えられたのであるが、その後の長い人生を惰性のまま生きて行くには無理があると悟ったのです。従って富士山型の人生を見直し、八ヶ岳型とまでは言わないまでも会社人生を終えた後も一つ二つ小さなピークを描くような人生観に切り替える必要を感じました。「人生百年登り坂」と息まいた時もありました。でもそれでは途中息切れするやも知れず、適当に浮き沈みがあり幾つもの小さなピークを登り降りしながら、最後は天空への道に辿り着ければ幸せと思うようになったのです。

いずれにしても生涯現役を貫くことでのみそれが可能になると思います。歳を取れば身体は萎えてくるがやる気はまだ十二分にある、人は生まれた時から生きる力の総量はあまり変わらないと言われています。若い時は体力や気力が凌駕するが歳を取れば知恵と経験が蓄積されて来るから、若いものに負けない程の仕事も出来ると言うことなんです。我が人生を競馬に例えるなら今は第4コーナーを廻った辺りかも知れません。これからホームストレッチに差し掛かる、人それぞれにゴールラインは異なるが、人生の勝ち馬で終わろうとするならば、ゴールまで疾走しなければならないでしょう。今まで走ってきた人生でよれよれになり、疲れ果て青息吐息でやっとこさ駆け込む馬も多いですよね。でも第4コーナーまで余力を持って走って来た馬は最後の鞭を入れることで颯爽とゴールを駆け抜けて行くことが出来るんです。これから如何に過ごすかがどんなに大切なことか競馬が教えてくれるのです。(笑)

若い世代は勿論のこと、老後を楽しく過ごす3つの大事な要素は「健康、お金、友達」と言われます。健康とお金については敢えて説明の必要はないが友達については興味深い研究結果があります。我々日本人が長寿なのは食生活が良いからと言われることがあります。確かにファ―ストフードなどの消費が多い国と比較すると健康的と言えるでしょう。しかし日本食は塩分が多く、主食の炭水化物の割合が多過ぎるとも言われます。それでは遺伝子が優れているのだろうか?あるいは国民皆保険制度があるから?どちらも間違いではないかも知れないが、他にも日本が特別に優れているとされる長寿の秘訣があるのです。
興味ある研究結果は「お互い様」とか「持ちつ持たれつ」と言った連帯意識、あるいは地域での絆を意味する「ソーシャルキャピタル」にこそ長寿の秘訣があると言いいます。そこで国別に他人を信頼している人の割合と各国の平均寿命との関係を調べたところ、見事に関連があることが分かりました。つまり周囲の人を信用出来ている人程長生きするようなんです。人は無意識のうちに周囲の人から支えられたり生活や行動への影響を受けたりしています。一見健康とは関係なさそうな人と人との関係や地域の良さが長寿をもたらすと考えられているのです。

これらのことから何を言いたいのかと言うと、今一度グリーン会の会則の冒頭を読み返して下さい。設立の趣旨は「グリーン会はダラス地区又はその周辺に永住または永住を検討している日本人を主とする人達が集まり、親睦を図り会員相互の生活の向上を目的とする非営利団体である。」とあります。ご存知のようにグリーン会はこじんまりとした組織ではあるのですが老若男女和気藹々、会員相互の絆や助け合い精神は比類なきものがあり、人生を楽しく過ごす三要素の一つである「友達」と言う観点からみると、グリーン会の果たす役割は限りなく大きなものがあると再認識する次第です。

大谷雅夫